部落に住んでいる人たちは、江戸時代の被差別身分であった穢多や非人の子孫で、血筋が違うから差別されるのだと考えている人が多くいます。部落差別は血筋の違いを根拠としているというのです。これは正しいのでしょうか。
児童・生徒に、両親、祖父母、曾祖父母と、自分の祖先をたどり、それぞれの名前を順に書くように指示してみてください。すると、曾祖父母の名前を知らないという児童・生徒が数多く出るでしょう。また、祖父母の名前を4人とも正確に知っている児童・生徒もそれほど多くないかもしれません。このように、少なくとも自分の3代前がよくわからないという時代なのです。
Aさんという人がBさんという人を部落民だとみなし、差別的な言動を行ったとします。では、AさんはどうしてBさんが部落民であるということがわかったのでしょう。Bさんの祖先を調べ上げて(Bさんが若ければ、5代ほど遡らないと、江戸時代にいけません)、確かにBさんの5代前は穢多であった、非人であったという事実をAさんは確認したのでしょうか。それは不可能です。自分自身の3代前がよくわからないのに、赤の他人の5代前など、わかるはずはありません。結局は、Bさんは部落といわれるところに住んでいる、住んでいた、住んでいたかもしれないということを根拠に部落民であるとみなしたにすぎないのです。そこでは、血筋は何の根拠にもなっていません。