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コラム⑩立場を自覚していない部落の子どもをどう支えるか


 私は、小学校教員として現在5校め、そのすべてが校区に部落のある学校です。これまで、「立場の自覚」について、保護者のみなさんと、幾度となく話し合ってきました。
 ある保護者は、「先生、同和教育をそんなにがんばらんといてよ」と言いつつ、「でも、しっかり教えとかなあかんし……、大切なことやし……」とわたしにではなく、わが子の将来を案じて自問自答し、つぶやいていました。それを間近で聞いたことを覚えています。
 いうまでもなく、「そんなにがんばらんといてよ」は本心ではありません。部落問題に向き合い、子どもや保護者に寄り添ってこそ、その本心に近づくことができるはずです。
解放学級の閉鎖、学校の同和教育の衰退により、「立場の自覚」や「部落問題を学校でどう教えるのか」について保護者・地域と話し合う機会、つまりは地域とのつながりが切れてしまった学校が多いように聞きます。
 同和教育に取り組むうえで大切な、保護者・地域との連携、そしてその願いや思いを知ることができていないのです。
このような状況で、「部落の子どもを支える」には、まず、学校が校区の部落を、担任がそこに住む子どもを、被差別の当事者として、認識することです。そして、担任をした際、家庭訪問などの機会に保護者と向き合うことです。差別をなくしたいという思いや、同和教育に取り組む確かな意志があれば、保護者の願いや思いに近づくことができるはずです。
これまで、「差別に出合わないのなら、知らせたくはない」「機会がきたら話すつもりでいる」などためらいの声を聞いてきました。
そのうえで、「立場を自覚してない部落の子どもをどう支える」のか。
「差別に出合ってからでは、遅いですよね」「(立場の自覚をしていなくても)いま、できることをいっしょに考えませんか」と話し合ってきました。次のように。
・何でも話し合える(親子)関係を築くことって大切ですよね。つらいことがあったときこそ、それは大切ですよね。
・もちろん、わたしたち(教員)も、何でも打ち明けてくれる存在になりたいと思っています。
・そして何より、仲間とつながる力をつけるような取り組みをしていきましょう。
 これらは、部落の子どもたちだけに必要なものではありません。どの子どもにも必要なものです。それを部落の子どもたちが、確実に身につけられるようにしていくことが大切です。一方、この視点で学級づくりをすすめ、どの子どもにも身につけられるようにすることが、部落の子どもにも大切なのです。(小学校 同和教育を核にした学級づくり」64ページ参照)
 さらに部落問題をめぐる現状から、次のような取り組みを起こしたいと考えています。
 地域とのつながりが弱くなったいま、まず、その再構築を図ることが一つです。
また、地域と切り離されている部落の子ども・保護者もいます。担任したことなど何らかのつながりを生かし、個として・有志として、「部落の子ども・保護者に寄り添う」ネットワークづくりが考えられます。
今後、ぜひ取り組みたいです。


坂本研二